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創作の分野において、「この世における全ての創作には既に原型が存在している」と言う言葉があります。また、マンガの世界でも「全ての物語のパターンは手塚治虫が開拓した」とも言われています。つまり、人が想像しうるものは既に誰かが想像していると言えます。想像を元にする創作を助ける為に、クリエイティブ・コモンズは存在しているのです。

クリエイティブ・コモンズとは?

クリエイティブ・コモンズ(creative commons)は直訳すると「創造・創作のための共有物」と言う意味を持っています。つまり、「創作を目的とするのであれば自由に使っていいですよー」という性質のものなのです。基本的にクリエイティブ・コモンズとは、この性質を利用した著作物への便宜を図ることを目的とした非営利団体のことを指します。日本国内では2003年から活動を開始しています。

クリエイティブ・コモンズの対象とは

クリエイティブ・コモンズによって「創作活動に利用できる」とされる著作物は、次のように著作権問題をクリアしたものになっています。

パブリックドメイン

パブリックドメインは、直訳すると「公共の領有地」になりますが知的財産権的には「著作権が放棄・失効した著作物」という意味になります。保護期間を満了した著作物や手違いなどで著作者が明記されなかった著作物などが対象となります。

オープンコンテント

オープンコンテントは、ソフトウェアにおけるオープンソースの思想を換骨奪胎することで生み出された概念です。オープンコンテントは、「著作権を維持したままで利用する為の制限を緩くした著作物」なのです。

コピーレフト

コピーレフト(copyleft)は著作権の英訳である「コピーライト(copyright)」を捩った、新しい著作権の概念です。コピーライトが著作物の利用や翻案・改変・再配布などを制限する概念なのに対して、コピーレフトは著作物を共有財として利用・改変・翻案・再配布を制限しないとする概念なのです。

クリエイティブ・コモンズのライセンス

クリエイティブ・コモンズでは、登録される著作物に対してライセンスを提供しています。このライセンスはクリエイティブ・コモンズによって設定された四つの項目についての可否を明らかにするもので、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが提供された作品の扱いを明示することが出来ます。

表示(Attribution)

この項目は、ライセンス下の著作物を利用する際に原著作者の名前を表記することを求めるものです。

非営利(Noncommercial)

この項目は、ライセンス下の著作物を非商用目的にのみ利用することを許可するものです。

改変禁止(No Derivative Works)

この項目は、ライセンス下の著作物を改変・翻案なく利用することを求めるものです。

継承(Share Alike)

この項目は、ライセンス下の著作物を利用して創作を行った場合、新しい創作物に対しても同じライセンスを適用することを求めるものです。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの使い方

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、クリエイティブ・コモンズの公式サイトで簡単に発行してもらうことが出来ます。それと同時に、ライセンス内容を要約して文面化した「共有権利証書」、法廷でも使えるようにライセンス内容を明示した「リーガルコード」、機械的にライセンス内容を読み取ることが出来る「デジタルコード」の三つの書類が手元に送られてくる仕組みになっています。ライセンスの項目は、常に「表示」が示されるようになっています。「改変禁止」と「継承」は内容上同時に選択することは出来ません。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが適用できる著作物

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが受けられる著作物は、音楽・文章・映像・絵画などのほとんどの著作物が該当しています。プログラムの著作物に関しては、コピーレフトの原点であるGNUプロジェクトによる「GNU General Public License」、GPLが適用できるので含まれていません。

パブリックドメインを巡る問題

パブリックドメインは、著作権や特許が失効した状態もしくは権利者が権利を主張できない状態にある知的財産です。その為、様々な問題の引き金にもなっているのです。

映画の1953年問題

日本においては、著作権者が没してから50年間に渡って著作権が保護されますが保護期間が満了した著作物はある程度自由に扱うことが出来ます。保護期間満了で著作権が失効した映画はパブリックドメインと見なされ、権利を持っていた会社以外からビデオなどを自由に販売することが出来るようになります。しかし、2004年から施行された改正著作権法では、映画の著作物の保護期間が70年に延長されたことを受けて、パブリックドメイン化していた映画の権利問題が浮上してきました。

満了するのは2003年か2023年か

つまり、1953年に公開された映画は公開から50年経った2004年には保護期間を満了しているはずなのですが、この期間延長を考えると2023年に満了することになるのです。この問題を受けて、パブリックドメイン化していたはずの「ローマの休日」などの格安DVDを販売していた会社と権利を持っていた会社の間で裁判が起こったのです。現在、「ローマの休日」に関しては既にパブリックドメイン化していると見なされていますが、他の映画に関する裁判が継続しています。

日本での著作者人格権の扱い

著作者人格権は、著作物の創作者を明示するための知的財産権です。しかし、日本の法律下では著作者人格権を放棄することは出来ません。このため、作ったばかりの創作物をパブリックドメイン宣言しても、パブリックドメインとして見なされないケースがあるのです。

取るべきはライセンスかノーガード戦法か

「こういう場合のためにクリエイティブ・コモンズがある!」と考える人も多いのでしょうが、他者に利用してもらう場合にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは有効に作用します。しかし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは著作物を利用した他者にも同じライセンスの適用を余儀なくする性質があります。もしも、ライセンスを受けた著作者と利用者の思惑が違っていた場合、クリエイティブ・コモンズは有効に作用したとは言えなくなります。つまり、この場合著作者は著作権の一部だけを活かす「知的財産権ノーガード戦法」を取らなければならない可能性が出てくるのです。