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1990年代中盤以降から情報をインターネット上で公開する企業が増加し、現在では自社のウェブサイトを持っていない企業は信用されないほどに、企業活動の一環としてインターネットが定着した感があります。そんなインターネット上において、消費者が企業のウェブサイトに辿り着く為に必要となるインターネット上の住所がドメイン名なのです。

ドメイン名を知る!

ドメイン名とは、「http://www.○○○.co.jp/~」というURLが有った場合の「○○○.co.jp」の部分を指します。ドメイン(Domain)には「所有地」という意味がありますが、ドメイン名(Domain name)という場合にインターネット上での表札の役割を果たしているものを指すのです。

なぜドメイン名でサイトに繋がるのか

現実において、初めて訪問する友達の家を探すには住所と表札などの目印になるものを目安にします。では、インターネット上でサイトを訪問する場合だけどうしてドメイン名だけですぐに見つけられるのでしょうか? インターネットとは、つまるところ「サーバー」と呼ばれる世界中の大型・大容量のコンピューターを回線で結んだものです。これらのサーバー内には「IPアドレス」と呼ばれる番号が振り分けられています。このIPアドレスが現実における住所の役割を果たしているのです。IPアドレスだけでもそれぞれのサーバーに収められているウェブサイトを訪問できるのですが、IPアドレスは基本的に数字の羅列の組み合わせなので、1文字間違えだけでもとんでもないところに辿り着いてしまうのです。その為、人間が覚えやすい文字・数字の組み合わせや単語に変換する必要があります。これを「ホスト名」と呼びます。このホスト名を更に判りやすくしたものがドメイン名なのです。つまり、ドメイン名は「住所表示がなされた表札」そのものなのです。

ドメイン名は唯一無二のもの

現実において、郵便物の誤配は時折見受けられます。誤配は同じ苗字が一地区に集中している、住所がわかりづらいといった原因によって起こるものです。もしも、ドメイン名が重複することが出来たらどうなるでしょうか? プライベートで見つけた仕事に役立つサイトにアクセスしたら、とても会社では見られないような内容のサイトに繋がってしまったら大変なことになります。銀行のサイトにアクセスしてオンラインバンキングを行ったら、実は偽のサイトで暗証番号を知られてしまったりする可能性も出てくるのです。こういったトラブルが起こらないように、ドメイン名は世界にたった一つのものになるよう管理されているのです。

ドメイン名の管理者

しかし、ドメイン名をそれぞれの国が勝手に管理していては世界各国に同一ドメイン名があふれることになってしまいます。そのため、世界中のドメインは「ICANN」という民間の非営利団体によって一括管理されています。ICANNが世界各国のドメイン管理団体と提携することで、同一ドメイン名が発生しないようになっているのです。日本でドメイン名を管理しているのは日本レジストリサービス(JPRS)という会社で、2002年からそれまでドメイン名を管理していた日本ネットワークインフォメーションセンターから管理権を引き継いで運営されています。

知的財産権としてのドメイン名

ドメイン名は、一種の知的財産権として見做されています。ドメイン名は、重複さえしていなければどんな名称のドメイン名でも条件内であれば自由に取得できます。そのため、新製品の発売と前後してドメイン名を取得し、発売と同時に宣伝の一環としてサイトを開設する企業も現れています。ドメイン名の唯一無二という性質を利用することで、高い宣伝効果を挙げることが可能なのです。

ドメイン名の先願主義

ドメイン名の登録は、他の知的財産権と同じく先願主義を採っています。これは、知的財産権において当然ともいえる仕組みです。権利が与えられるのは、一番最初に正当な手続きを行った人だけに限定されなければなりません。また、ドメインの登録者は一定期間中であれば登録を抹消することができます。通信販売におけるクーリングオフ制度のようなものです。

知的財産権を利用するサイバースクワッティング

数年前から、「サイバースクワッティング」「ドメインスクワット」といった言葉が取りざたされるようになっています。「スクワット」という言葉を聞いて連想するのはヒンズースクワットがありますが、この場合のスクワットは「居座る」という意味です。サイバースクワッティングとは、「有名人や大企業が必要とするであろうドメイン名を個人などが先行して取得して、高値で取引しようとする行為」を意味しています。

ドメイン名の先願主義を悪用

サイバースクワッティングが意識されるようになったのは、1990年代後半に起きたインターネット・バブルの発生でした。IT関連企業の株価の上昇などが複合的に重なって起きたこのバブルでは、インターネットやIT関連を利用することが一種のステイタスとなっていました。この動きと連動する形で、特定の単語を使用したドメイン名が高値で取引されていったのです。しかし、高額の金銭が動くことというのは良くも悪くも人を引き付けるものです。二匹目のドジョウを狙ったドメイン名取得が増加していったのです。前述の通り、ドメイン名は先願主義を採用しています。そのため、企業や有名人が自分の名前にちなんだドメイン名を取得しようとした場合、先願取得者から言い値で取引しなければならないという事態が発生したのです。

日本でのドメイン名係争

著作権

日本においてもサイバースクワッティングの事例がいくつか存在しています。たとえば、ある信販会社の名称を使ったドメイン名を何の関係もない会社が取得していた事例や、老舗百貨店のドメイン名を先行取得した業者がいかがわしいサイトにドメイン名を利用していた事例などがあります。これらの事例は裁判の結果信販会社と百貨店にドメインが委譲されることになりましたが、この時点ではドメイン名は知的財産権として見做されてはいませんでした。しかし、世界的にサイバースクワッティングに関する裁判が次々と起こったことからサイバースクワッティングを取り締まるための法改正や協力体制などが整備された結果、日本国内でのサイバースクワッティングはほとんど途絶えています。

それでもなくならないサイバースクワッティング

しかし、WIPO(世界知的所有権機関)の発表によれば2006年のサイバースクワッティングに関する係争の総数は2005年度よりも増加していることがわかっています。また、複数のドメイン名登録を行ってから、ドメイン名ごとのアクセス数を調査してから無料期間中に登録を抹消する「ドメイン・テイスティング(味見)」という行為も問題視されています。ドメイン・テイスティングで有益と判断したドメイン名を使ってサイトを起こして広告料を稼いだり、サイバースクワッティングに利用したりするのです。

ドメイン名は商標と同じ効果を持つ

さて、知的財産権という観点から見ればドメイン名は商標と同じ役割を持っています。ドメイン名に使用される単語は、会社や製品の持つ信用そのものを引き継いでいると考えられるからです。それは人名でも同じことです。そういった他者の信用を利用する行為は、「不正競争防止法」で取り締まることが出来ます。錯誤を起こさせる名称を利用することは、相手の信用を奪うことなのです。

ドメイン名の今後

ドメイン名が一攫千金の手段であった時代は既に過ぎ去ったように見えます。しかし、ドメイン名の需要がなくなったわけではありません。ドメイン名を正式に取引する会社やドメイン名を監視するサービスを提供する会社など、形を変えてドメイン名ビジネスは存在し続けているのです。また、2001年からスタートした日本語をドメイン名に使用できるサービスは認知度がいまだ低いままです。こういったドメイン名のサービスをバランスよく見極め利用することが、今後のドメイン名の方向性を決定するのではないでしょうか。