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日本において知的財産権が「知財」と略されて、新しいビジネスチャンスだと認知されるようになってまだ10年も経っていません。つまり、知的財産権への認識は未だ薄いままなのです。また、人は自分の権利を強く認識し保護するものですが、他者の権利には無頓着になる事が往々にしてあります。特許や実用新案などの産業財産権や著作権は良く知られていますが、その他の知的財産権はあまり知られていません。そこで、その他の知的財産権と知的財産権を巡る動きを紹介していきます。

知的財産権が守るもの

知的財産権は、基本的に「人格権を保護するもの」と「財産権を保護するもの」に二分することが出来ます。産業財産権や著作権は、法律上でこの二つの権利を守るために規定された項目を有しています。

人格権とは何か?

人格権は、憲法で定められている「幸福追求権」の中で、「個人の人格的利益を保護する」権利と考えられています。幸福追求権は、日本国憲法の第十三条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」として保護されているのです。人格権は、人間が社会生活を送る上で関わってくる「信用」や「名誉」を保護する為の権利として認識されています。

財産権とは何か?

財産権は、個人や企業が財産を所有することを保護する権利です。日本国憲法の第二十九条で「財産権はこれを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と規定されています。財産と言う概念は、金銭などの実体を伴うものですが国の方針によっては個人財産を持つことが困難になることが往々にしてあります。財産権は、たとえ国であっても不正な手段で財産を徴収することが出来ないとする権利なのです。

知的財産権は社会生活を保護する

人格権と財産権を保護すると言うことには、どのような意味があるのでしょうか? 人格権が保護する信用や名誉と言うものには形がありません。しかし、信用が無ければ商取引が成立しないことや、名誉が無いから信頼されないこともしばしばあります。財産権が保護されていなければ、消費者が金銭や有価証券による貯蓄が活発になって購買を行わなくなり、経済活動が萎縮する恐れが出てきます。つまり知的財産権は、人格権と財産権を憲法の下で保護するシステムとして機能することで、社会生活を保護しているのです。

産業財産権・著作権以外の知的財産権

では、知的財産権として認識されている産業財産権や著作権以外の知的財産権にはどのようなものがあるのでしょうか?

肖像権

技術の進歩によって、写真やビデオが携帯電話などでも撮影できるようになって来ました。気軽に写真を撮って楽しむことが出来るようになった分、注意しなくてはならないのが肖像権です。有名無名に関わらず、人は写真やビデオなどに撮られることの是非を選択する権利があるのです。

育成者権

発明が「自然法則を利用した新規のもの」、著作物が「感情や思想の創作物」でそれぞれを特許と著作権が保護しています。そして、品種改良によって生み出した植物の品種を保護するのに使われるのが育成者権です。品種改良された植物は、特許などでは保護できないので育成者権が存在しているのです。

ドメインネーム

インターネットで、目当てのウェブサイトに辿り着く為には目印が必要となります。その一つがドメインネームです。ドメインネームは全世界で唯一無二の存在で、一つとして同じものは無いのです。ドメインネームは、企業にとって信用を伴う看板としての価値があることが広く認知されています。

回路配置利用権

1980年代に、世界中でコンピューターの開発競争が盛んに行われていました。そして、コンピューターの性能を決定する要素となったのが半導体集積回路でした。回路配置利用権はそんな競争の中で生まれた、半導体集積回路の設計を保護し、権利者以外によって権利が保護された半導体集積回路を製造させない権利なのです。

自由に使用できる知的財産権とは?

知的財産権の中には権利者が権利を自ら放棄することで、条件内で自由に使用することを可能にしたものがあります。

パブリック・ドメイン

著作権法では、著作権者が没後も一定期間に渡って著作権を保護されることになっています。パブリック・ドメインは直訳すると「共有公地」で、知的財産権的には「特許や著作権の権利者が、発明・著作物の権利が自分に帰属することを宣言できない状態にあるもの」を指しています。パブリック・ドメインとされるのは権利者が既に物故しており保護期間を満了したものや、公表の際に権利者を明記していなかったものなどがあります。

オープンソース

パソコンなどで動作するソフトウェアは全てプログラムから成り立っています。ソースとは、プログラムの全容を示す言葉です。オープンソースは、ソースコードを公開することで著作者の著作権を維持しながら、参加者によって更にプログラムを発展させることが出来る知的財産権なのです。

フリーソフトウェア

フリーソフトウェアは、オープンソースの原型となった概念です。フリー(Free)には「自由」と言う意味と「無償」と言う二つの意味を持っていますが、フリーソフトウェアは前者の「自由なソフトウェア」と言う意味を持っています。フリーソフトウェアは、無料配布・有償配布の制限はなく、「著作者の著作権を認めること」「ソースコードを全公開すること」などの条件を満たしていれば良いとされています。

クリエイティブ・コモンズ

クリエイティブ・コモンズは知的財産権の名称ではなく、著作権の一部を開放することで著作物を利用しやすくして創作を発展させようと言うプロジェクトのことです。設定された使用条件を守ることで、インターネット上での創作活動に役立てやすくするというのです。