産業財産権著作権その他の知的財産権知的財産権の取得方法
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日本においては、著作権の成立基準に「無方式主義」を採用しているので著作物が創作された時点から発生するものとして定義されています。しかし、電話の発明者の例を引くまでもなく類似の著作物を同時に創作してしまう可能性はまったく否定できないのです。そのため、「この著作物は何時作られたか」「この著作物は誰が作ったか」を明示するための制度として著作権登録が存在しているのです。

著作権登録の方法とは

文化庁が行っている著作権登録は、基本的に「著作物の権利が誰にあるのかを明らかにする」ためのものです。もしも、あなたが匿名で小説をインターネット上で公表していたとします。その小説が人気を博し映画化するという話になりました。しかし、あなた以外の人が「作者である」と名乗りを上げてきたらどうでしょうか? しかも、あなたの手元には作業途中のファイルは一つも残っていませんしサイトを更新するためのパスワードもなくしてしまっています。いったい、誰があなたを作者だと信じてくれるのでしょうか?

著作権登録制度の内容

このような事態が発生することは非常に稀ですが、起こらないとも限らないのが現実というものです。著作権登録は、あなたの権利と著作物を保護するためのものなのです。

実名の登録

著作物の発表には、筆名や匿名を選択しても良いことになっています。しかし、何時までも「何々という実名を持つ者が著作者か」を明らかにしないままでいると、著作者にとって大変不都合なことになります。それは、著作権の保護期間です。匿名や変名で発表した著作物は、著作者の消息がつかめないため、著作者の没後50年間ではなく発表後50年間までしか保護されなくなるのです。実名の登録は、氏名表示権を行使して匿名または変名で公表した著作物の著作者の実名を文化庁に登録する手続きです。これによって、世間的には匿名または変名で公表されたことになっていても知的財産権的には著作者が明らかな状態になります。

第一発行年月日等の登録

手元にある漫画や本などで、つい最近発売されたばかりのものはないでしょうか? 奥付に記載されている発行年月日は大抵の場合、発売日よりも少し後の年月日が記載されています。これは書籍の著作権が発生するのが「第一刷が発行された年月日」になるからです。「第一発行年月日等の登録」は、この「第一刷が発行された年月日」を登録する手続きで権利が何時発生したかを明確にする役割を持っています。また、演劇や音楽、映画やウェブサイトなども登録が行えます。その場合は「第一公表年月日等の登録」となります。

創作年月日の登録

著作権侵害の事例で、侵害しているかいないかの根拠の一つになるのが「いつ著作物が作られたか」という時系列です。例えば、Bという著作物を侵害しているとされるAという著作物が2000年4月に作られていたとした場合、Bの著作物は2000年4月以前に公表されていたことを証明しなければなりません。「創作年月日の登録」は、こういった事例に際しての有効な証明手段となる手続きなのです。ただし、創作年月日の登録は創作後6ヵ月以内でないと登録できません。でないと、後出しの著作物を先行著作物にするための悪用がされてしまうからです。創作年月日の登録は、後述する「プログラムの著作物」に有効な著作権登録で、その他の著作物については「第一発行年月日当等の登録」が適用されています。

著作権・著作隣接権の移転等の登録

一般に「著作権」という場合、著作財産権を指しています。著作財産権は、著作者人格権と違って委譲することができる権利です。著作隣接権は、著作者と契約を行った実演家やレコード会社に発生する権利なので、契約が破棄されたり実演家やレコード会社が契約を継続できなくなったりした場合、別の実演家やレコード会社に著作隣接権が移行することもあります。「著作権・著作隣接権の移転等の登録」は、著作権や著作隣接権が今までの相手から新しい相手に移る場合に活用される手続きなのです。

出版権の設定等の登録

最近は「コンビニ本」と呼ばれる、装丁を簡素にしてコストを抑えた低価格本が人気を博しています。コンビニ本で人気が高いのは漫画ですが、連載中とは違う出版社でコンビニ本が発行されている漫画も少なくありません。「出版権の設定等の登録」は、出版社を著作者の意思で変更した際に「出版権は何処にあるか」を明らかにするための手続きです。

プログラムの著作物の登録

パソコンやゲーム機で使用されているソフトウェアは、基本的にプログラムで構成されたデジタルデータなので、劣化することなくコピーできるとされています。そのため、十分な設備があれば無尽蔵にコピーすることも可能です。「プログラムの著作物の登録」は、文化庁ではなく「財団法人ソフトウェア情報センター」の管轄となっています。プログラムの著作物の登録では「実名の登録」「創作年月日の登録」「第一発行年月日の登録」「著作権の登録」の四種類の手続きが行えます。

著作権登録に掛かる費用は?

著作権の登録には、産業財産権と同じく書式に従った書類に料金と同じ額面の収入印紙を添える必要があります。金額的には産業財産権よりも低額に設定されているので、気軽に登録することができるといえます。

基本的な著作権の登録費用

文化庁で設定されている著作権の登録に必要な費用は、「実名の登録」が9000円、「第一発行年月日等の登録」「創作年月日の登録」が3000円、「著作権・著作隣接権の移転等の登録」では、著作権を移転する場合は18000円、著作隣接権を移転する場合は9000円、「出版権の設定等の登録」は30000円となります。また、著作権登録は名義の変更や抹消することが出来ますがその場合は1000円掛かります。

「著作物に質権を設定する」とは?

著作財産権は、持ち家や土地などの財産権と同じ効果を持っています。つまり、著作財産権を担保にして銀行などから融資を受けることが出来るのです。著作財産権を担保とすることを「質権の設定」といいます。著作権登録された著作物に質権が設定された場合、文化庁にその旨を申し出る必要があります。その場合、必要書類とともに納付しなければならない金額は、債権の1000分の4になります。つまり、著作物を担保に100万円を借りたとするなら4万円を納付しなければなりません。

著作権登録に必要な書類とは

著作権登録には、文化庁が定めた書式に従った書類を提出する必要があります。書類の内容は収入印紙を貼り付ける「申請書類」と、著作物の概要を示す「明細書」の二種類です。ほかにも、「実名の登録」の場合は住民票の写しを一部、「第一発行年月日の登録」の場合、著作物の複製が50部頒布されていることを証明する資料を添付する必要があります。ウェブサイトは「第一公表年月日の登録」に当たるので、公表したウェブサイトを見たという証明書が必要になります。「著作権・著作隣接権の移転等の登録」「出版権の設定等の登録」などには第三者を介して作製した委譲証明書などを添付する必要がありますが、書類作製をお願いした弁理士や弁護士に作成してもらいましょう。必要な書式一式は文化庁のウェブサイトなどで入手することが出来ます。

プログラムの著作物登録に必要な書類は

プログラムの著作物の場合も、文化庁の著作権登録に従った書式の書類を必要とします。プログラムの著作物登録に必要な書類はソフトウェア情報センターのウェブサイトで揃えられますが、「マイクロフィッシュ」と呼ばれる大型のマイクロフィルムにプログラムの著作物を複製したものを添付しなければなりません。プログラムの著作物登録には一律47100円と手数料の2400円を銀行振り込みで、目的に応じた文化庁の著作権登録と同額の収入印紙を申請書類に貼付して納付する必要があります。

著作権登録で対処できる事例

インターネットの普及に伴い、著作権侵害の事例は急増を続けています。著作権侵害は社会問題となったファイル交換ソフトだけでなく、趣味の領域でも増えているのです。著作権登録は、そういった事態に遭遇した場合に効果を発揮するのです。著作権登録の効果は、出版社やレコード会社などの企業間にだけでなく個人単位においても発揮されます。

「自分が一から創作したウェブコミック・ウェブ小説が盗用された!」

二次著作物の場合、一次著作物との権利の兼ね合いがありますが自分のオリジナルは完全な一次著作物として著作権が保護されます。しかし公表媒体がウェブサイトの場合、コピーしたデータを改ざんして、盗用者に都合の良い発表年月日をつけることだって出来るのです。こうして「自分のほうが先だから自分が著作者だ!」と主張してトラブルになるケースがネット上で起こっているのです。こうした場合、「実名の登録」「第一公表年月日の登録」を合わせて行うことで「誰が作ったのか」「最初に公表したのはいつなのか」がセットで明示できます。また、ネット上にアップロードした日付をプロバイダーやサーバー管理者に証明してもらうのも一つの手段です。

「自分のウェブサイトが他人のものにされそうになっている!」

ネット上では、「フィッシング」「ファーミング」といったインターネットの仕組みを悪用してサイトを乗っ取る騙しの手口が危険視されています。しかし、こういった手法以外でもサイトの乗っ取りが行われています。それは、ネットのマナー意識が割合低い年代によるサイトの乗っ取りです。彼らはなぜか「インターネット上にあるものは全てタダで早い者勝ち」という考えを持ち、サイトの製作者に向けて「このサイト素敵だから貰ってあげる! もう友達に私のものって言っちゃったし」というような内容のメールを送りつけるのです。この後、新喜劇などにあるような「俺、母ちゃんに社長になったって言っちゃった」で始まる人情ドラマが展開するわけがありません。乗っ取り側がサイト側に対してサイトの委譲を迫るメールを大量に送りつけるなどのトラブルが展開していくことになるのです。幸い、ウェブサイトは著作権登録の対象となっています。インターネット上では実名よりも変名を使用するケースがほとんどなので「実名の登録」を行っておく必要があります。そして、「第一公表年月日の登録」も行っておくことで誰がそのサイトの運営者であるかを明確に示すことが出来るのです。