産業財産権著作権その他の知的財産権知的財産権の取得方法
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特許は知的財産権の中でも最も浸透した権利であるといっても過言ではないでしょう。「発明=特許」という公式が導き出せるほどに、特許によって億万長者になった人のエピソードが人口に膾炙しています。しかし、日々の中から発明に至るアイデアをつかむことができる人はほんの一部の人に過ぎず、さらに特許をとれるだけの発明に練り上げることができる人はさらに絞り込まれてしまいます。もしも、あなたがすばらしい発明のアイデアを得た場合、どのようにして特許を取ればよいのでしょうか?

特許を取るための方法とは

特許を取るためには、とにかく特許庁に特許出願書類を提出しなければなりません。出願書類を書かなければ、その発明は自己満足にしか過ぎないのです。

特許出願書類を作るには?

特許出願書類は様式に従って所定の項目を埋める必要があります。特許出願書類の様式は特許庁のウェブサイトなどで手に入ります。特許出願書類がどのような構成で、どのような項目があるかを解説していきます。

特許出願書類の構成

特許出願書類は、「特許願」「明細書」「特許請求の範囲」「図面」「要約書」から成り立っています。図面に関しては添付できなければしなくても良い性質のものとなっています。

特許願

特許願は特許の出願者や書類の提出日などを明らかにするための書類です。特許願には特許出願料と同額の特許印紙を貼っておく必要があります。

明細書

明細書は、発明の内容を示す書類です。発明物はどのような分野に属するもので、従来技術にある欠点はどのようなものか、この発明はその欠点をどのように克服しているのか、発明を使用することでどのような効果が得られるのか……といった発明についての解説を行います。

特許請求の範囲

特許出願書類の中で最難関といわれているのがこの特許請求の範囲です。特許請求の範囲では、発明がどのようなものであるか、どのような要素から成り立っているか、どのような効果をもたらすのかを硬めの文章で表現していく必要があります。特許請求の範囲の目的は、「発明によって発生する特許の有効範囲を決定する」ためのものです。この項目をしっかりと書き込んでおかないと発生する権利が狭まってしまうことがあります。範囲を広く取りたい場合は、考えられる有効範囲一つごとに請求項を一つ増やしていきます。

図面

図面では、発明の外観や内部構造などを解説していきます。説明したい部分は注釈をつけて明細書に別紙記載しておきます。

要約書

要約書には、発明が解決したい課題と発明がどのような手段を持って課題を解決しているかについて解説します。また、図面を添付してどのような形で解決しているかを示すこともできます。

特許出願書類の提出方法

特許出願書類を提出する方法には現在のところ二種類あります。

書面提出

書面での提出には特許出願書類を直接特許庁の窓口に持っていって提出する方法と、書類をそろえて郵送する方法があります。前者は関東在住でないと難しい方法なので後者の郵送による提出のほうが盛んであるといえます。

電子出願

特許庁ではインターネットの普及以前から、通信回線を使用した特許出願を1990年から受け付けていました。現在では、インターネットによる出願も受け付けています。ネット上の書類には特許印紙が貼れないので、オンラインバンキングや電子マネーを使って出願料を納入します。電子出願には、特許庁のサイトで配布している出願用のソフトを使用して出願を行います。

特許出願にはお金はいくら掛かるのか?

知的財産権の権利を得るには、基本的にお金が掛かるものと思ってもらっていいでしょう。特許もその例外ではなく、相当のお金を払わなければなりません。しかし、産業財産権の場合は出願料というリスクを負うものの、有益であるものであれば高いリターンを期待できるのです。

特許出願料はいくら?

特許願に特許印紙で貼り付ける出願料は、16000円となっています。特許印紙は郵便局で入手できますが、大きい郵便局に行かなければ入手できないことがあるほどなので前もって予約しておくのが確実だと思います。

出願審査請求料とは?

出願を済ませて一安心、とは行きません。出願料とともに特許出願書類を提出しても、それは「書類を提出した」だけなのです。特許が認められるためには「出願審査請求」をしなければなりません。特許庁には、年間40万件に及ぶ出願が来ているのです。そして、出願審査請求がなされていない出願書類は、いつまで経っても特許が認められることはありません。出願審査請求には、出願審査請求書を出願審査請求料とともに提出する必要があります。出願請求料は168600円で、「特許請求の範囲」で増やした請求項一つにつき4000円必要になります。ちなみに、出願請求後に発明の内容は既存のものと一致するなどした場合は、出願審査請求料の半額が戻ってくる仕組みになっています。

特許登録料とは?

審査請求が通ってもまだ息は抜けません。審査の中で「書類のここが変だ」「内容のここはおかしい」といった部分が出てきたら、それらの改善すべき点が示された書類とともに「拒絶理由通知」が送付されてきます。この書類にしたがって出願書類の補正を行って、査定をクリアすれば無事に特許が認可されます。しかし、ここでもまだ終わりではありません。特許を維持するための特許料を特許庁に払い込む必要があります。最初に払う特許料は基本料金の2600円に請求項一つにつき200円を足した額になります。たとえば請求項が4つあったら、2600円+200円×4=2600円+800円=3400円となります。これは一年間の額で、特許料を最初に払い込む際には3年分一括納付なのでこの場合3400円×3で10200円を払い込まなければなりません。特許料の額は、1年目~3年目、4年目~6年目、7年目~9年目、10年目~25年目の四段階に分かれています。それぞれ8100円+請求項×600円、24300円+請求項×1900円、81200円+請求項×6400円となっています。「払えるかなぁ」という心配は、とりあえず審査に通ってからすることにしましょう。

特許料が減免される?

このように、特許出願するには高額といって差し支えない額のお金が掛かってきます。たとえ、審査がストレートに通って請求項が一つだけだったとしても16000円+168600円+200円+(2600円×3)+(200円×3)=16000円+168600円+200円+7800円+600円=193200円と、相当額のお金が掛かってしまいます。なので、特許庁では特許料・出願審査請求料の減免措置を行っています。

減免措置を受けられる条件とは?

減免処置を受けられる対象となっているのは「資力に乏しい法人・個人」や「大学や研究機関などの専門機関」です。後者の場合、「産業技術力強化法」「産業再生法」に基づいて出願審査請求料と特許料1年目~3年目が半減免除となっています。

「資力に乏しい個人」の条件

では、前者の「資力に乏しい法人や個人」とはどのような条件を満たしている場合を言うのでしょうか? 個人の場合、「生活保護を受けている」「市町村民税(住民税)が課せられていない」「所得税が課されていない」のうちのどれかを満たしていることが条件となります。生活保護受給者・住民税非課税者は特許料・出願審査請求料が全額免除され、所得税非課税者は特許料が3年間の猶予、出願審査請求料が半額減免されます。

「資力に乏しい法人」の条件

一方、「資力に乏しい法人」の条件は少々厳しくなります。「その発明が職務発明であること」「その職務発明を予約承継していること」「資本金の総額が3億円以下」「法人税が課せられていないこと」「支配法人がないこと」の全てを満たして初めて、特許料の3年間猶予、出願審査請求料の半額減免の措置を受けられるのです。